ようやく「HDの画質」に対する議論がされるようになってきた

最近ようやく「HDの画質」に関する話題が一般向けのメディアに出るようになってきた。

今までは、SDとHDの視聴条件の違い(視聴距離はSDは画面の高さHに対して5.5倍だが、HDは3.5倍なのでHDだと本来は「画面にかぶりついて見る」のが正しい見方)を無視して720Pより1080iの方が綺麗とか言っていることが多かったわけで「ようやく」って感じもある。まあ、放送局内での画質評価でもモニターを二台並べて見比べるなんてことしているわけで、「モニタが正しく作られている」としても制作側がそれを生かすつくりをしていなかったらまたややこしい話になる。


http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060601/ce08.htm

 「映画を見るような映画館並の臨場感をもたらすには、45度の画角がいいといわれる。日本の住環境を考えると1.8メートルの距離で見ることが求められるが、それらを実現するには、65インチのブラズマテレビで2H(画面の高さの2倍)という距離になる。2Hという距離では、フルHDでないと画素がノイズとして見えてしまう」。

 「一方、スポーツを見る際の臨場感を再現するには、30〜35度の画角が最適。これを1.8メートルという距離で逆算すると、3Hとなる50型が最も臨場感を堪能できる画面サイズとなる。だが、3Hの距離があれば、一般のHDでも、画素やノイズは、ほとんど気にならない」とする。

映画の場合に制作者が圧倒的に大きい画面での視聴を前提にしているから、周辺部分は「基本的に見えない」ことを前提にしている。*1スポーツの場合には圧縮時のデータレートが高い*2し、視聴環境が映画よりもプアであることなことを考えると画角狭めということなんだろう*3 ))

AVWatchの記事では出てきていないが、ニュースだと適正な画角はもっと狭くなるだろうし、バラエティも画角が広くなると見切れが厳しくなるので制作費用が厳しくなる。50インチくらいの環境だと「逆にモニタ面の一部を使って小さく表示した方が見やすい」ということも出てくるだろう。

映像的にも音声的*4にも、視聴環境の想定って結構重要だけ思うはずだけど、今のAVの視聴空間の想定って"50インチモニタを2人で見る"みたいな想定になっていて、現実の茶の間の環境とは程遠いのじゃないだろうかと思うんだけどどうだろうか。

*1:人間の視覚は視点移動が無いと画面の極狭い範囲しか見ええず、周囲は明るさと動き程度しか感知できない。このため画角が45度もあるとTVのように「画面いっぱい」に情報をうめこむときちんと見えないのだ。

*2:特に芝生の上のスポーツの場合

*3:これも実は制作意図の問題で、NHK技研でみた4kシアターの「相撲」はそれはそれでいいコンテンツだったと思う((まあ4KのHDTV研究することに意義があるのかというのは完全に別問題ですが。

*4:視聴空間の音響特性がリビングみたいに比較的広くてデッドな環境とリスニングルームみたいな比較的小容量で反射が多い環境とでは音作りはまったく違ってくるはずなんだけどね。