相変わらずだけど、池田信夫氏が暴走している。

池田信夫氏が800MHz帯のパブリックコメントへの総務省の回答に対する反論の中で相変わらず技術的に拙いことかいています。「800MHz帯デジタルFPUは移動SNGの出現により不要になったし、マラソン中継ぐらいしか使い道が無いので通信業界に明け渡せ」みたいなことが書いてあるのですが、知人はちょっと待てっていわなかったのかしら。

800MHz帯には確かにデジタルFPUが1次業務にあって、それはマラソン中継ぐらいしか使わないのは事実。でも報道で800MHzFPUを使わないというのはうそだし(少なくとも私は使ったことがある)、同じ周波数を全国2万本(多分もっとある)のワイヤレスマイクが使っているわけで、東京ビックサイトや幕張メッセあたりの運用調整の厳しさを知った上で意見を言ってほしい。

池田氏は「ワイヤレスマイクなんて1MHzもあれば十分」なんていっているが「地震がきたらつながらなくて当然」「回線のつまり具合で音質が変わる」なんていう、ワイヤレスマイクからすれば「ものすごく低い品質の回線」を維持すれば足りる携帯電話あたりと同じレベルで考えられるとちょっと話がややこしい。

実はすべての周波数の中で携帯電話の周波数は周波数利用効率が異常に高いけれども、ほかの周波数は利用効率を上げる手段があまりないっていうのもあるし、業務用周波数は「最大ピーク時の利用量」を基準にチャンネルを割り当てているけど、携帯電話の場合には最大呼量が発生した場合には発着信を制限することが許されているというのは本質的な違いとして当然ある。

でもって、たとえば放送事業用の連絡回線だと使用時間は10分/日くらいで、同一エリアの7局分をまとめても24時間で見るとまるでスカスカになっている。ではこれを7回線を2チャンネルのMCAに出来るかというと...無理なんだなこれが。なぜかというと「非常事態時には全局同時に電波が出る」ので統計多重が効かないし、放送業務の連絡回線ってラップ読みなどに使われるから、簡易業務みたいに「今は埋まっているから3分後に通話してください」なんてことも不可能なわけ。

もしも「確率的に空いているんだから使わせろ」っていうのは技術的には可能なわけだけど36MHz帯域が端から端まで埋まっている場合(4CHとも埋まっている場合)二次業務側はトラフィックをどこに逃がすかを考えているのかはかなり疑問。(だからキャリアの要求は「帯域を何割かよこせ」であって、「空いているから共用しましょう」では無いわけ)

それから、マラソンは移動SNGで出来るでしょ!っていうのも限りなくダウトだわな。

ラソン中継というのは確かに年に1回しかないけど、1回の放送を行うために通常5日ぐらいリハーサルだの伝送試験だのをやるもの。マラソン中継をするために5日間もトランスポンダを占有するというのはかなり金銭的にありえない話。 しかも実際問題として東西方向に走行中に移動SNGが使えるかっていうと道路そばに建っているビルとか、街路樹とかにビームがさえぎられるのでかなり頻繁に回線が落ちると思う。これはスイッチングで逃げるとかそういうレベルではない。
箱根登山駅伝とか山がちのところを走るばあいだと800MHzOFDMのガードインターバルを超える超長いロングパスが飛んでくるから、まあそういうところだと800MHzより便利なことをはあるし、現実にそうやって運用してるマラソン大会も無いことはない。

まあ、ほかの人もいっぱい反論書いているけどほとんどまともに理解しているそぶりが無いってことは、氏のことは「馬鹿の壁」の向こうだということで、技術的な話については無視すべきなんだろうな。