TV放送の電波利用料見直しへ,総務省の研究会が報告書案

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070629/276213/
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>> 報告書案には,これまで実際に使用している周波数帯域幅よりも少ない帯域幅電波利用料を支払ってきたテレビ放送局について,利用している周波数幅に応じた電波料額の算定が行われるべきという内容が記載された。

うーん変なの。もともと電波利用料っていうのは独自財源のない郵政省が自分のところの事務処理のOA化をするためにとり始めた一種の事務手数料だったはず。だから現状は占有周波数や電力に関係なく一局いくらで計算されている。
電波利用料を固定資産税みたいな「周波数資源を流動化させるためのコスト」にするのはひとつの手段としてはありなんだけど、放送局としては、いりもしないHD放送させられた挙句その分金も取られるなんて踏んだりけったりだし、*1本気で周波数を有効活用する気があるのなら、地上放送局の置局計画はもっと違っていたものになったはず。

ISDBの特徴のひとつ「SFNで周波数利用効率の向上」ってのもかなり怪しいです。
たとえば、ある山の一帯を送信所4箇所でカバーする場合には、放送局は大電力の送信所を山頂に、山ろくにサテライトをおきます*2
携帯電話基地局の置局では、山から少し離れたところで、山を取り囲むように同一出力の局を4局設置するでしょう。これはインフラの性質の違いもありますが、大きな違いは携帯電話基地局の場合には周波数の再利用効率も考えているので、カバーエリアがやたら広い送信所を作ってしまうとその周波数がほかの地域で使えなくなってしまって利用効率が低下するためでもあります。

現実的に、北海道で札幌(手稲山)、旭川、滝川サテライトみたいな構成を想定して、旭川局と札幌局でのSFNを行うと、旭川局のごく近傍でも札幌局の電界の方が強いエリアが出たり、サテライトのエリア近くでは電界強度の切り替わりと変調タイミングの切り替わりの位置がずれるため電波が復調できなくなったりします。こんなことはISDB-Tの設計しているときに誰でも気がついていたはずで、これをもって「周波数利用の効率化」なんていうことをいった郵政省は殆ど詐欺に近いでしょう。*3

ま、放送局もその詐欺に乗ったんですが、携帯電話と違って放送はひとつの方式作ったら少なくとも20年は使うんですから、システム作った後で政策方針の大転換をするのは、国富をどぶに捨てることになるので、やめてほしいなあと思うきょうこのごろ。

*1:現在放送局はHD放送だからといって得はしないが、地上波放送の免許には50%以上HDを流さないいけないという条件がついている。

*2:サテライトは山そのものの影になって電波が届かない地域のため。

*3:最近ISDB-TでSFNなんていう人は少なくなってきましたが。